Monday, April 17, 2006

・知っている人は知っているが。アメリカの小説家故フィリップ・K・ディックには、「流れよわが涙、と警官は言った。」というSFカルト小説があるが、このタイトルの前半部は16・17世紀のイギリスの作曲家ジョン・ダウランドのもっとも有名な歌曲からとったものである。ディックの後期の小説には、ルネサンス音楽の影響がここ其処に見られる。

・意外なことに、日本でもかつてはよく読まれた、ヘルマン・ヘッセはアメリカではカルト小説家と捉えられている。彼の小説も、バロック以前の音楽が主要なモチーフをなしている。ノーベル文学賞をとった「ガラス玉演戯」などはまさにそうだ。

・ヘッセは、トーマス・マンとの書簡集で、マンは新ウィーン派以降しか音楽と認めていない、と揶揄った。マンはそれに応え、「ヘッセさんに、とって、音楽はパーセル以前を指すのでしょう」とやじり返した。